3月30日(日)「著書:慢性上咽頭炎をよくするEATの本が発売されます」
この度、2025年4月に私の著書「慢性上咽頭炎をよくするEATの本(三和書籍)」が発売となりました。
慢性上咽頭炎に関する論文はいくつか書いてきましたが、一般向けの著書は初めてになります。

慢性上咽頭炎に関する一般向けの書籍としては、日本病巣疾患研究会理事長の堀田修先生が数多く執筆されています。
私も長年EAT(上咽頭擦過療法)を行ってきていますが、堀田先生は内科医でいらっしゃるので、耳鼻咽喉科医として少し別の角度からの書籍を執筆できればと思っていました。
本書の執筆にあたっては町田市で開業されており、慢性上咽頭炎だけでなく音声関連や耳管開放症など多くの著書を執筆されているはぎの耳鼻咽喉科の萩野仁志先生に相談してみました。
そこで、萩野先生の書籍出版にも携わった三和書籍の小川潤二さんを紹介していただきました。
最初に小川さんと面談したのは昨年6月でした。
当初本の執筆について相談したところ、医家向けの専門書がいいのではないかと言われましたが、自分の希望として一般の読者を対象とした書籍を書きたいという意向を伝えました。
一般向けになると、ライターに内容を伝えて執筆をお願いするという慣行もあるようですが、とりあえず自分で書いてみるということになりました。
原稿のイラストは、現在美術大学大学院生である娘の奈津子に頼むことにしました。
その翌日小川さんの社内で出版に関する会議があり、この話は採用になったと伝えられました。
それから実際に執筆を開始しました。
書籍には実際に当院でEATを行った患者さんの実例を多く載せています。
「患者様の声」という章では、EATを受けられたご感想やご意見を患者さんに書いていただき、ほぼそのまま載せました。
快く引き受けていただき、ご協力いただいた患者さんには感謝しております。
小川さんと最初に面談してから約3か月後の9月に原稿を送りました。
小川さんからは書籍のボリュームからして12万字ぐらいの量を示されたのですが、仕上がった原稿はその半分ぐらいの文字数となっていました。
あとで肉付けすることもできるかと思っていましたが、結局ほぼこの原案の原稿のまま進むことになりました。
耳鼻咽喉科医の立場から、鼻咽腔内視鏡写真を多く載せ、その解説を加えました。
その後しばらく連絡が途絶えていて、内心ぽしゃったのかな・・と思い始めていた約2か月後の11月に、突然書籍の書式として仕上がった原稿が送られてきました。
それからは原稿の編集や修正作業を何度かメールでやり取りしながら進めて今回の書籍出版に至りました。
文字数が少ない分製本された本の文字は大きめであり、結果的に読みやすく仕上がったかと思います。
本書籍はYahoo!ショッピングや楽天ブックス等のネット販売でも購入することができます。
今後一般の書店でも販売されるのではないかと思います。
当院内では割引価格で購入していただけますので、もしよろしければ手に取って読んでいただけると嬉しく思います。
2月25日(火)「高齢者の声帯委縮対策としてのストロー発声法」
診療を行っていると、とくに高齢者で声がかすれてきた、大きな声が出なくなった、むせやすくなったなどの症状で受診される患者さんがいらっしゃいます。
声を出す声帯も、年齢とともにやせてくる(萎縮してくる)現象が起こりやすくなります。
声帯が委縮すると声帯の閉じが悪くなるため、発声時にも声帯の間に隙間ができたりします。
ここで正常の声帯と声帯委縮の内視鏡写真を示します。

左の正常例の場合、声帯には厚みがありますが、右の声帯委縮例の場合は声帯の厚みがなく、凹型となっています。
声帯は肺へと通じる気管の入口にあたります。
飲み物を飲むときなどは声帯が閉じて気管への流入を防いでいますが、声帯の閉じが悪いと気管内に入ってしまいむせるといった症状になります。
この状態が悪化すると、高齢者の死因上位ある誤嚥性肺炎を起こしてしまう可能性があります。
また、力を入れて物を持ち上げるなどの時は、声帯を閉めることで筋力を最大限に発揮します。
声帯から空気が抜けると、力が入らなくなってしまうのです。
喉の衰えを簡単にチェックすることができます。
最長発声時間と言われるもので、出しやすい声の高さと大きさで、できるだけ長く「あー」と発声します。
平均値は成人男性30秒、成人女性20秒です。
男性14秒以下、女性9秒以下で異常とされています。
声帯の筋肉は身体の筋肉と同様に、使わないとやせ細って(萎縮して)しまいます。
声帯を使うこと、つまり大きな声で喋ったり、歌を歌ったりすることは予防になります。
たとえば歌手の小田和正さんは80歳近くになるのに、若い頃と同様にきれいな高音で歌われていますね。
ご本人が歌手活動を続けていることについて、「まだ声が出るから」と話していたのを見たことがあります。
これは普段から歌って声帯が鍛えられているかだと思います。
これまで患者さんには大きな声を出したり、歌ったりするよう促していましたが、現実問題として大声を出すことは家庭内や近隣への迷惑にもなりえます。
そこで昨年11月14日にNHKで放送された「あしたが変わるトリセツショー」という番組で声帯委縮に効くストロー発声法というのを紹介していました。
この方法ですと、大きな声は出ないので周りの迷惑を気にする必要はありません。
ストロー発声法のやり方
1. ペットボトルなどに水を入れ、そこにストローをさしてブクブクと吹きながら「う~~」と発声します。
2. これを5秒間×10回を1日3セット行います。
3. まずは出しやすい声の高さで行いますが、慣れてきたらいろいろな高さの声を出してみましょう。高い声を出す筋肉と、低い声を出す筋肉は異なるので、声帯周りの筋肉をバランスよくしっかりと鍛えることができます。
4. さらにブクブクと吹きながら歌を歌ってみるのも効果的です(チューリップの歌やよろこびの歌などいろいろやってみてください)。
以下は補足です。
・ストローの太さについて:ストローは細いほど効果があるとされていますが、細くなるほど難しいため最初は太めのストローから始めてみて、慣れてきたら細いストローでもやってみましょう。
・ストローを水に入れる深さについて:ストローを水の中に深く入れるほどより負荷がかかります。最初はストローを水面から2-3cmほど入れたところで声を出してみましょう。
・慣れてきたら:ストローを少しずつ深く入れたところで声を出してみます。例えば水面から5cm入れて5秒間、さらに10cm入れて10秒間声を出し続けるなどしてみてください。
・血圧が上がったりすることもあるので、あまり負荷をかけすぎないように注意してください。

普段からしっかりとした声で喋ったり、歌ったりすることも効果があります。
是非参考になさってください。
1月26日(日)「東京都スギ花粉飛散開始はフライングです。意外にも寒かった屋久島の話題と」
今春のスギ花粉は、東京都で観測史上最も早く1月8日に飛散が開始したと報じられました。
テレビでは、ニュースキャスターなどがすでに鼻がムズムズしたり眼がかゆいなどと言っていたり、街中のインタビューでも症状が出始めた人などを報道しています。
早めの花粉対策をと報じています。
けれど、この1月8日の「東京都スギ花粉飛散開始」は明らかにフライングです。
東京都のスギ花粉観測結果は東京都保健医療局の「東京都の花粉情報|東京都アレルギー情報navi.」というHPで確認することができます。
まずは昨年2月の観測結果を見てみます。

花粉飛散は、花粉の観測値1個以上の飛散が2日連続した場合に飛散開始と定義されています。
昨年の場合は赤い四角で囲ったように、2月9日と10日に、青梅、多摩、立川で1個以上の花粉が観測されたため、2月9日が飛散開始日となっています。
その後花粉飛散数は徐々に増えて、2月15日には青梅で287.7個とかなりの数が飛散しています。
つまり、飛散開始日当初の花粉飛散数は少ないのですが、1週間ぐらいして一気に増えるというのが通例です。
それでは今年の観測結果を見てみます。

今年は太田区で1月8日に1.2個、1月9日に1.9個の花粉のが観測されました。
そのため、1月8日が「東京都スギ花粉飛散開始」とされたわけです。
しかし・・・、その後の飛散数をご覧ください。
ほぼ0.0で埋められていますね。
飛散開始したのであれば徐々に増えて、1週間後の1月15日ぐらいには多く飛散しているはずです。
つまり“フライング”です。
おそらく今年も2月10日ぐらいが「本当の東京都スギ花粉飛散開始」だと予想しています。
この東京都保健医療局のHPはどなたでも閲覧できますので、是非ご参照いただいて花粉対策にお役立ていただければと思います。
花粉症に対する薬(抗ヒスタミン剤)の服用は早く始めたほうがいい、としばらく前には言われていましたが、最近の抗ヒスタミン剤は割と早く効果を現します。
したがって真の花粉飛散開始ぐらいに服用を開始すれば大丈夫です。
現在でもまだ症状がなくて花粉症でいらした患者さんには、2月に入って鼻がグスグス始まってからで大丈夫ですよ、お話ししています。
一方でこのようにスギ花粉の飛散がほとんどないのに症状のある方は、ハウスダストやダニなど通年性と言われるアレルギーをお持ちか、1月から飛散が開始するとされているハンノキなどに反応している可能性があります。
採血をすると原因がはっきりするので、ご希望の方は検査をされるといいかと思います。
話は変わって、1月の連休に世界遺産の屋久島に行ってきました。
もう30年ぐらい前に石垣島で3か月ほど暮らしたことがあり、屋久島も南国の島というイメージで行ってみたのですが、本州と変わらないぐらい寒かったです。
屋久島は周囲約130kmあり、島には九州本島を含む九州地方で1位から8位までを占める高山があります。
海から山がそびえたつような島です。
これに対して屋久島から見えていた種子島は平坦な島で、隣に位置するのにその違いには驚かされました。
島の北側と南側では気候もかなり違うということで、冬だと北のほうは寒くて天気が悪くても南のほうは暖かかったりするそうです。
行ってみると、高い山には雪の積もっているのが見えました。
滞在中に屋久島一周ウルトラECOマラニックというマラソン大会が開催されていたのですが、気温6度の中大雨が降っていたり、時には雹が降ったりの天気で、低体温症になってしまったランナーが続出してしまったようです。
屋久島観光の目玉は縄文杉を含む屋久杉を巡るコースなのですが、この雪で道路が通行止めになってしまい、これらの観光地を巡るコースには行かれず、島を周遊する道路沿いを見て回りました。
最終日には白谷雲水峡という観光地への道路が開通して行ってきましたが、雪が残っていました。
順に屋久島にいたヤクシカ、ヤクザル(寒くて固まっている猿団子)、島の海の風景(永田浜:夏にはウミガメが産卵に来ます、クリスタル岬、枕状溶岩)、そして白谷雲水峡登山道の雪景色を載せておきます。






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